Hondaパワープロダクツの様々な取り組みやニュースを、
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水上のカーボンニュートラル。Honda電動推進機プロトタイプでの実証実験を松江市で開始

Honda創業者の信念を具現化するための第一歩

Hondaの「水上モビリティ」である船外機。船舶の推進力と舵の役目をもつ船外機を、Hondaは1964年から販売し続けています。創業者の本田宗一郎が説いた「水上を走るもの、水を汚すべからず」という信念に基づいて、当時2ストローク船外機が主流だった船外機市場に、環境に優しい4ストローク船外機を開発して参入しました。4ストローク船外機は環境には優しいものの、コスト面などで、なかなか市場には受け入れられず苦戦を強いられました。しかしHondaは、創業者の理念の下で4ストローク船外機にこだわって開発・販売を続けてきました。
そして、船外機の市場参入から約60年の時を経て、Hondaはいま、新たな一歩を踏み出しました。

Honda電動推進機プロトタイプが実証実験を開始

Hondaは、2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、さまざまなチャレンジを続けています。それは二輪や四輪にとどまらず水上においても同様です。
2023年8月、Hondaの新たな挑戦として「電動推進機プロトタイプ」を使用した実証実験がスタートしました。
Hondaによる【水上のカーボンニュートラル】のはじまりです。

Hondaの電動推進機プロトタイプとは?

電動推進機プロトタイプとは、ビジネス用電動三輪スクーターのジャイロ e:など電動バイクシリーズで実績のある4kwの小型電動モーターを採用した船舶用の推進機です。
電源には、Hondaの二輪車などで実績のあるHonda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)e:を採用。バッテリーを交換しながら運航することで効率的に長時間の利用を可能としています。
外観は、全高をおさえて後方視認性の向上を実現し、電動ならではの素早くプロペラを逆転させる推進機専用の回生制御を採用することで小回りの効く旋回性を実現するとともに、低騒音・低振動によって乗船時の負担軽減にも貢献しています。

実証実験を行うのは脱炭素でカーボンニュートラル観光を目指す島根県松江市

松江城をバックに静かにお堀を進む電動船
実証実験を行う場所は、脱炭素で「カーボンニュートラル観光」を目指す島根県松江市にある「ぐるっと松江 堀川めぐり(堀川遊覧船)」。約400年前に築城された国宝5城のひとつである松江城の周囲を囲む全長3.7kmの「お堀」を、時速約5km/hの屋根付き舟で1時間ほどかけてめぐる観光遊覧船です。
この堀川遊覧船では、1997年の運航当初から環境に優しいHondaの4ストローク船外機(BF9.9)を使用していました。
実証実験の場所として堀川遊覧船を選定した理由は、環境省が選定する脱炭素先行地域として「カーボンニュートラル観光」を掲げ、さまざまな環境活動に取り組む松江市の思いと、Hondaの環境に対する思いが重なったことにあります。また、堀川遊覧船のサイズと、現在使用しているエンジン船外機の出力、遊覧船の運用方法などがHondaの想定する電動推進機のスペックと合致したことも決め手となりました。

Hondaが発表した「電動推進機コンセプトモデル」が松江市長の心を捉えた

2021年11月にHondaが発表した『電動推進機コンセプトモデル』の記事を見た職員から情報を得た松江市の上定昭仁市長は、Hondaとコンタクトを取るよう指示し、その後の協議を重ねて今回の実証実験へとつながっています。
実証実験に先立って開催したメディア向けの説明会で上定市長は「冬はこたつ船、夏は風鈴船など季節ごとに松江城を訪れる観光客を魅了する堀川遊覧船は、松江城とともに松江市観光の一丁目一番地であり、既に運航開始から730万人以上の乗船客数を誇る人気の観光コンテンツ」と強調し、「世界で唯一となる電動推進機プロトタイプの実証実験を松江市で実現できることは、とても光栄」と語ります。また「水上モビリティの電動化をきっかけに、松江市を世界中からたくさんの人が訪れにぎわう場所にしたい」と抱負を述べていました。

Hondaの電動推進機プロトタイプを搭載した遊覧船に試乗する上定市長

実証実験の途中経過。電動推進機プロトタイプを搭載した遊覧船の魅力!

実証実験を現場で取り仕切るのが、堀川遊覧船を運営する公益財団法人松江市観光振興公社。実証実験がスタートして約2か月(2023年9月25日現在)が経過。これまでの実証実験は関係者を中心としたものでしたが、その評価は上々でした。堀川遊覧船の船頭さんは高齢の方が多いのですが、電動推進機は振動が少ないために身体への負担が大幅に軽減されたそうです。
また、遊覧船がお堀の橋の下を通過する際にエンジン音が反響してしまうこともないため、船頭さんのガイドの声がはっきりと聞き取れるそうです。
実証実験で乗船した関係者からも「これまで気づかなかった水の音や鳥のさえずりに癒やされた」という声をいただいています。


現在、公益財団法人松江市観光振興公社では、一般の方々の実証実験参加に向けた準備の最終段階に入っていますが、その前のイベントとして、10月22日と29日、松江市民を対象にしたエンジン船外機と電動推進機プロトタイプの乗り比べ体験会を開催予定です。この体験会の模様も含めて、今後は、実証実験のレポートをHondaマリンサイトに随時掲載していきますので、ご確認ください。