パワープロダクツ Behind The Scenes

意外なところで活躍している
Hondaパワープロダクツの世界をご紹介します。

「野人」岡野雅行と芝生とHonda。

Jリーグのクラブが芝生生産で地域課題を解決

サッカーJ3のガイナーレ鳥取が取り組む、芝生の生産・販売を通じた地域貢献が「しばふるプロジェクト」。そこで活用されているのが、プロジェクトパートナーとして協力するHondaのロボット芝刈り機Miimo(ミーモ)です。

ガイナーレ鳥取が主体となり、地域課題の耕作放棄地を再利用して育てた芝生で公共施設や学校を緑化。売り上げはクラブの活動資金になります。
もともとは耕作放棄地だった場所を再利用して芝生を生産することで、
地域の課題解決の一助ともなっています。

スタジアムの芝生をミーモで管理

なぜガイナーレ鳥取はミーモを選んだのでしょうか。その理由はとても手間の掛かる芝刈りを楽にするため。ガイナーレ鳥取では本拠地オールガイナーレYAJINスタジアムをコスト削減のためにスタッフ自ら管理しています。

「専門家には『素人には無理』って言われましたが、試行錯誤を重ねてノウハウを積み重ねて上達しました」と、スタジアム管理を始めた当時を振り返る、代表の塚野真樹さん。
そして、「芝生管理のノウハウを活かし芝生を生産して『ガイナーレの芝』として売り出せば話題になるし、クラブも潤う。でも芝生の生産管理には人手とコストが掛かります。特に頻繁に芝刈りをしないと良い芝生は育たない。そこで、この芝刈りに最適な方法を探していたところ、偶然にも『Hondaが自走式のロボット芝刈機を発売した』という記事が目に留まりました」と、塚野さんはミーモとの出会いを語ります。

塚野さんは本田技研工業フットボールクラブの出身。「昔の伝手を頼りにミーモの担当者を紹介してもらい、プロジェクトの趣旨を説明すると『ミーモの訴求につながる』と快く協力してもらえました」。

「繁殖力の旺盛な芝をミーモで頻繁に刈り込むと根と茎が丈夫になり、刈り取った芝カスが土に還って養分になるのでフカフカで上質な芝に育つんです」。塚野さんは芝生生産とホームグラウンドの管理にミーモを使い続けて、その効果を実感しました。

野人を生んだ芝生のチカラ

「現役時代はスパイクで芝生をグイッと踏み付けながらピッチを疾走していたので、付いたあだ名が『芝生殺し』でしたね」とユーモアを交えながら芝生愛を語る、ガイナーレ鳥取のジェネラルマネージャーで「野人」のニックネームで親しまれる岡野雅行さん。
岡野さんが初めて天然芝のピッチを踏んだのはサッカー少年の頃。「決勝戦まで勝ち抜いて、天然芝の球技場で試合した時に『こんなに上手くなるんだ』って感動しました。デコボコした土のグラウンドでボールを蹴ると狙ったラインに転がりませんが、芝生の上では思い通りにボールをコントロールできるんです。日本のスポーツのレベルアップに校庭や公園の芝生化は欠かせません」。

しばふるプロジェクトの芝生は、校庭の芝生化に役立てられます。「土のグラウンドが芝生になると、子供がケガを気にせず思いっきりかけっこやボール遊びができるんです。太陽の照り返しが減って熱中症も防げるし、いいこと尽くしですよ」と、岡野さんは足元から子供の健康を育むしばふるプロジェクトへの想いを熱く語ります。

芝生化した後の管理をミーモに委ねると人手とコストを大幅に削減でき、芝生化のハードルが格段に下がることが口コミで広がり、芝生化する小学校や中学校も増加。生産規模も2,000m2からスタートしたしばふるプロジェクトの芝生生産は、現在では50,000m2(東京ドーム約1個分)まで拡大しました。
しばふるプロジェクトで生産された芝生を納入した「つばさ保育園(鳥取県境港市)」。約400m2の園庭を芝生化しました。芝生の出荷と園庭への敷き詰め作業は、ガイナーレ鳥取を運営するSC鳥取の従業員に加えて、ガイナーレ鳥取の所属選手や園児の保護者も参加して行われました。

なぜHondaはしばふるプロジェクトに協力したのか

Hondaがしばふるプロジェクトに協力した理由は、冒頭で触れたミーモの訴求に加えて、ガイナーレ鳥取が解決しようと考えていた地域課題です。人口減少や高齢化で拡大する耕作放棄地を芝生畑として蘇らせ、芝生環境を整備・拡大するというプロジェクトの目的が、ミーモをはじめとするHonda製品の新たな利用機会を創出し、社会貢献につながると考えたのです。

プロジェクトを通して、家庭向けのミーモをサッカースタジアムや公共施設など広範囲の芝生管理に活用する実証実験を行い、Hondaは得られたデータを今後の製品に役立てていきます。

編集後記

ガイナーレの本拠地YAJINスタジアムの芝生は、SC鳥取のスタッフが管理し、今では芝生生産まで行い、ビジネスとして軌道に乗せていることに正直驚いた。

国内では耕作放棄地が大きな課題となっているが、SC鳥取の活動は、この課題に対して大いなるヒントなのではないだろうか?

刈り込まれた芝生を見ていると、この芝生の上を子供たちが素足で走り回り、たくさんの笑顔が生まれる日が待ち遠しい。 天然芝のグラウンドが全国に広まれば、サッカーを始めとした日本のスポーツ全般のレベルアップにつながるという野人・岡野さんの言葉は、課題とともに、大きな期待をもてる言葉として受け取れた。